2009年03月26日

Mangifera indica


 この為に急遽来たのですが、今日は都内のホテルで開かれた硬筆書写検定の表彰式に来ています。

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 この検定は文部科学省が後援で、書道では唯一、全国統一の検定として知られています。英検、漢検などの書道版ですね。巷の書道の級とか段とかいうのは各書道団体が別個に出してるもので、団体によってまるっきりレベルが違ったりします。


 私は昨年から専門学校でこの検定向けの指導しているのですが、自分でこれを受けた事が無いので、自ら受けてみたら賞を頂きました。年間7万人強の中の50人くらい‥の確立ですね。

 もしもこれが『アメリカン・アイドル』かなんかだったらデビューできたかも知れませんね(笑)。 

 ともあれ、こういう受験も表彰式も、もう何十年も縁が無いのでなんだか新鮮でした。


 終わって割と近くにとげ抜き地蔵があるので参拝。すると境内では映画かTVのロケ中の様です。ミッキーカーチスさんや太陽にほえろの殿下(古い?)こと小野寺昭さんが演技してます。

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 で、、、今夜もまたブルーノート東京に。今夜はTerence Blanchardのカルテッド編成のバンドです。

 この人はこの間グラミー賞を獲得したばかりなのですが、人は開演前には疎ら。。やはりかぶりつきの席(ピアニスト側)に着いて、ぼけーっと待ってたら、半分くらいの席は、ぼちぼちと埋まりました。

 ふと見渡すと客層も昨日とはなんだか全然違います。ジーパン履いたジャズ研系の貧乏そうな兄ちゃん。ジャズ喫茶に居そうな地味〜な感じのおじさん。音楽聴く気があるのかどうかよく解らない年配アメリカ人の集団。


 『……………。』


 知名度やキャリアで言うと昨夜のパリの彼よりも遥〜〜〜かに高い人だけど、、、いやーリスナーってほんと実に正直と言うか、本当に美味しいものよく知ってるって言うか。。。


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 Happy mamaというカクテルとマンゴーの盛り合わせを食べながらそういう風景を眺めた。

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 で、演奏が始まると当然ながら、もう超hard bopな訳で、中間あたりで一瞬眠りそうになってるオレ。はっ、として後ろの客席を見渡すと…、数えましたよ。約5人は寝てました(笑)。

 演奏の中身は玄人好みのハイテクな応酬が続くのですが、昨日感じた様な、『表現の内面』などは正直全然聴こえてこないのです。

 こういう演奏フォーマットは後期アコースティックのマイルス・バンドからの影響が強い筈だけど、マイルスにせよコルトレーンにせよ、内面や表現主義を強く感じるから引込まれて聴ける訳で、これで内面の無い、音楽的スポーツの様な演奏だったら、これは聴くのが辛い。

 況してや普段色々な音楽を楽しんでる一般音楽ファンは、これにお金を払って聴く気がしないでしょうね。。ネームバリューやブランド価値、そして最高レベルの技量のあるこの人ですらこうだもの。

 80年代後半以降のアメリカのメインストリーム系のジャズって、完全にこの状態に陥っていると思う。

 ステージ終了後、一応のアンコールが係ってるけど、アンコールも無し。

 非常に巧い良い演奏だったのだけど、、。音楽としてなんか間違ってるよね、これ。。。

 バークレーあたりでベンキョ−してる諸君、これ重々承知してくらさい。美大とかで美学のベンキョ−からやった方が寧ろいいかもね。
   
 なんかいい〜勉強に成りました。。


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 帰ってホテルの最上階のバーで高層ビル群の夜景を眺めながら、ハーブティーとアイスクリームを食べた。

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 ここは実は、倒れて障害を持つ前の元気な頃の父と最後に喋ったホテルで、思い出の場所でした。あれから10年もたつのか…。

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posted by サロドラ at 00:00| 書道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月25日

GIOVANNI MIRABASSI


 今日は東京に来ております。例によって飛行機に乗って あっ、と思ったらそこはもう都内。まず向かった西洋美術館でやってるルーブル展です。

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 数週間前にヘアサロンで雑誌を眺めてたら、今回のルーブル作品記事があり、思わずその世界に感歎として見入ったのですが、特に私の目を惹いたのは『大工ヨセフ』という作品。横顔で蝋燭に手をかざす少年イエスと、後の磔を暗示する木片を細工するヨセフ、という絵。


 何かに導かれるかの様に生で観ました。


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 真近くで観る筆のタッチと、距離を置いて観るタッチが全然違い、光と陰翳のリアル感が凄いです。しかし、もしも写真で、モデルを置いてこれを再現できるかというと無理な訳で、やはり絵画という手法でなければできない濃厚な意味があります。


 この当時(1700年代)の絵画は、古代や神話への妄想を盛んに描き始めた頃で、人間が内面を表現し始めた頃です。そこで使用される数々の表現技法は現在の礎となっています。特に象徴や暗喩を表現に導入しているのはこの頃からです。この嗜好、傾向には個人的にかなり興味を感じています。この現象には何か重要な示唆があります。


 他に気に入った作品は、当時のエキゾチズムを描いた『ブラジル、パライーバ川沿いの住居』
 
 後のシュールレアリズムの先走りの様にも見えた『プロセルピナの略奪』



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 中世ヨーロッパに身を浸して後、今度はブルーノート東京で、GIOVANNI MIRABASSI TRIOを聴きました。
http://www.mirabassi.com/

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 隣の岡本太郎美術館に浮ぶオブジェ
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 その前によく観るとブリティッシュ系乗馬の店、、Tくんに教えなきゃ
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 私が無知なだけで既に人気者らしく開演前から凄い人
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 全く予備知識無しでふらりと行ったのですが、これは素晴らしい。。。イタリア出身でパリで活躍されてるピアニストですがヨーロピアン・ジャズの一種の理想型ですね。

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 客席は超満員です。で、例によってかぶりつきで聴きました(笑)。ステージ上のミュージシャンと同じ音で鑑賞できるから。


 ドラムのLeon Parkerの真ん前に座っております。いや〜この方、Paul Motianそっくりです、‥というか明らかに意識してる。特に風貌が(笑)。目の前でプレイを鑑賞してると、小技の手練手管を持ってますね、この人。

 ベースのGianluca Renziは、ヤマハのエレクトリック・ダブル・ベースを弾いてる。音を聴くまではどうかな?と思ったのですが、これがジャストフィット。普通はこういうトリオだと本物を使わないと、倍音の関係上うまくいかない、ところが、この方が寧ろかっこ良いですね。。

 この2人のリズム隊、素晴らしかったです。観客はピアノを聴いてる人が多いかも知れないけど、この2人のインタープレイは、小技が凄いです。普通やらない様な多彩なアイディアに満ちています。

 リズム表現的に巧いな、と思ったのはキューバ系のリズムの取込み方です。楽曲表現上の一貫性があって粋です。




 そして主役のGiovanni Mirabassiは、内面描写がもの凄く巧いピアニストです。誰が聴いても解りやすく洗練されてるけど、陳腐だったり軽くは決してならない。まるでアート系のヨーロッパ映画を鑑賞してる様な気分です。単にハーモニーを組み重ねるのではなく、音色の変化で主に聴かせるピアニストです。ほんと音色の色合いをコントロールするのが巧い!

 まるで、21世紀ヨーロッパ版Bill Evans trioの進化型を聴いてるかの様です。即効大ファンに成りました。

 客層もなんかお洒落ないい感じの人が多い。。


 Giovanni Mirabassi(p) Gianluca Renzi(b) Leon Parker(ds)
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 いや〜〜素晴らしくヨーロピアンな1日です。

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posted by サロドラ at 00:00| 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月21日

Great Gatsby


 先日の素晴らしいスピーチが印象に残り、近年出た村上春樹訳の「グレート・ギャッツビー」を読んだ。

 随分昔にフィッツジェラルド作品は村上文学経由で、野崎孝訳を全部読んでるのだけど、このニューバージョンは非常に凄かった。衝撃的でした。

 今の村上作品、『ノルウェーの森』以降の作品を私は全く読む気がしない。これは理由があるのだろうけど…。

 しかし、この翻訳はある意味、自身の作品制作と同等か、それ以上の渾身の仕事の様に見えます。それもあの頃の村上ワールドを支えている根幹に触れる様な。

 饒舌な情景描写や、人物の内面描写は、時代的なものかは解らないけど、そこで描かれてる世界は80年前の世界とは思えない。‥というか、『現代』自体の原形がその時に生まれた、とも言えるのかも。。

 しかし日本では大正ロマンとか、モボ、モガとかの時代ですよ、これ。。。

 そして私として特に興味があるのが、「ジャズ・エイジ」と言われるこの当時のNYの真相を描いてる部分。ここで見える世界は、「学生運動やってジャズ聴いてたニホンのおじさん達の触れたジャズ」と、なんだかほど遠〜〜いのです。

 要するに今の日本の雑誌情報等から眺めるジャズと、それはもの凄〜〜く違って見える。

 あと、ほど遠い世界のジャズ観の話で、ある意味、90年代以降の先端のジャズ、それはラウンジ・リザ−スなどに端を発してるのだけど、ジョン・ルーリーとフィッツジェラルドは同郷(ミネアポリス)なのです。この辺の符号の一致も読んでて面白い。重要な心象風景が、確かにあの、北欧的な都市の風景や人々にある。

 それから男女の恋愛心情を深くお洒落に描くこの人が、アイリッシュ系だと言う事実(ミネソタにはとても多い)も、扉の顔写真を観て、ふと気がついたことです。(この辺、個人的にツボ)


 そういう訳で、この作品を簡単に言うと、大量消費社会、バブル経済、これが生んだ美しい病が、この作品に描かれてる主題であり、そして多分、ジャズエイジたる由縁であり、ロストジェネレーションの真実だという事。

 結局、80年代に10代を過ごした僕らの世代もまた、ロスト・ジェネレーションなのかもね。


 でも…、、、、僕らは一体何を失ったのだろう?

 自分の古代世界への憧れもそれを取り戻したいのだろうか?


 これでも観ながら考えよう。。
 http://www.tsutaya.co.jp/doramafan/db/db_10.html





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posted by サロドラ at 16:31| 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年03月06日

村上春樹


 ふと見つけて読んで深く感動しました。この人はやはりずば抜けてる人物ですね。
http://mainichi.jp/enta/art/news/20090302mog00m040057000c.html?link_id=TT005


 演説では数年前のsteve jobsの大学での演説に匹敵する感動でした。しかも、2人とも同じ年代で同じ時代〜60年代を生きた人というのも象徴的です。
http://www.h-yamaguchi.net/2006/07/jobs_2f1c.html


 へんな自民党のあげ足取りで、影に隠れた感のあるニュースですが、これは世界に誇れる話題でしょう‥。なぜもっと大きな報道をしなかったのだ? 日本のメディア自体が歪みに歪んでるよね。まさにこれこそ村上ワードで言う『システム』だね。

 『作家は』という彼の言葉を、『ミュージシャンは』とか『アーティストは』とかに変えても良いでしょう‥。でも『作家は』という彼の言葉には、何か特別な意味や響きも感じます。


 戦後日本…、もしかすると第二次大戦を含む近代日本、、の良心をほとんど初めて世界に語った言葉の様な気すらします。

 川端も三島も大江も、、こういうシンプルで世界の何処の誰のハートにも沁み入る言葉を言えなかった。  

 それは結局、60年代の体験にあるのでしょう…。



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posted by サロドラ at 21:55| 文学 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする