ふと軽い気持ちで、最近のヒット作品2つを比較鑑賞しようと思って『
アナと雪の女王』『
風立ちぬ』を鑑賞しました。
…しかし、実際に鑑賞をしていたら、全然軽い気持ちで観れませんでした…。
『風立ちぬ』は、宮崎駿アニメの最終章の様な作品で、他のどの作品よりも自身にまつわる「内面の物語」が描写されています。
そして『アナと雪の女王』はCG界の宮崎駿(?)のジョン・ラセターによる円熟の境地の様な壮大なグラッフィックの世界です。
ジョブスの産み出したピクサー社のCG作品を、個人的にはあまり好きではありません。プロットの薄さを、グラッフィックの綿密さで埋めているのが、いつもの特徴だと思いますが、今回の作品の背景画や、人物描写などが相当な技術進歩をしていることに、とても感心しました。それでも、やはり人物の表情や動かし方には、あれでも、まだまだ繊細さが無い。しかし、それでもCGの情報量は、それはそれは凄まじいものです。
対して、宮崎アニメの、アナログな手描きによる人物描写は、やはり繊細で、顔の表情、手足の動きなど、円熟をも超えてる境地に思えます。
さて、そんな映像技法を鑑賞しようと思っていざ観てみたら、特に宮崎作品は、いつも以上にその内面的な問題、文学性に、もう号泣レベルで感動させられました。
この両作品とも、テーマは『真実の愛』の物語です。

アナ〜は、魔術の呪縛を解くのに真実の愛を描写し、風〜は、人間の生き方、一生を賭けた仕事、男女の愛、など人間の営為の全てを含んで真実の愛を描写しています。そして、さらに宮崎監督自身の人生経験への愛に溢れています。
風〜のプロットの骨でもある堀辰雄の小説「風立ちぬ」を私は未だに読んだ事がないのですが、おそらく小説を超えて、純化された監督の思いを感じます。そこに強い感動と共感をしました。
更には大正〜昭和初期の登場人物に、まるで自分の両親、祖父母達、、、実際に日本人が生きてきた心の世界を想起させられて、ファースト・シーンから引き込まれてしまいました。
当時の日本人の、生活様式の詳細、人々の心情や、礼儀作法の美しさ、など、この現代日本から眺めるからこそ、その全てが美しい…。
そして、死を覚悟の上でなされる密やかで慎ましい婚礼のシーン、自分の美しさだけを、自分の愛する人に見せて人知れず去っていく、菜穂子。

その心情の、なんていう美しさだろう…? なんていう美しい矜持(プライド)だろう? なんていう清々しさだろう?
恥ずかしながら、もう号泣が止まりませんでした………。

映像作品でここまで号泣させられたのは、他には唯1つだけです。
ハッピーエンドで終わるアナ〜の真実の愛、以上に、古代ギリシアの物語の様な、悲劇で終わる真実の愛に、どうして自分が打たれるのかはよくわかりません。
たぶん、そこに真実、それ自体を感じるからでしょうか…。
でも、ひとつ思ったのは、真実の愛、という過酷なものを支えてるのは、人間にとっての最高級のプライドだと思いました。
それは地上のどんなものよりも美しい…。
m.s.s. salodora photo
p.s.…非常に興味深い……。後半部、ラセター氏、バラカン氏、素晴らしい御意見です!
https://www.youtube.com/watch?v=6FfMsgWtyyc