さて…、先にも記しました昨年夏から続く私の朝風呂ツアーは、
いよいよ恐ろしいほどのディープさを、いや増しに増すばかりですが、ワタクシにつきものの、
温泉珍事も、その
ディープさをいよいよ増し始めた様子でして…。
最近、無精で髪の毛も伸び始めたところでもあり、このところ、その成りを潜めた
恒例の珍事のひとつも、無事復活(?)したらしく、つい先日も、例によって風呂上がりに素っ裸でぼけ〜っと座ってたら、割と若い二人組の男が、フロアーにガラッと入るや否や、
『
おぉー!』
と奇矯な声で叫んで、立ち止まったかと思ったら、あちらこちら眺めまわした上で
『あぁびっくりした、間違えたかと思った』などと、二人でブツブツつぶやきながら、いそいそと…。ふむ。。(←べつに理由は無い感嘆句なり)
で、そういうワタクシの方が、今度は
返り討ちに合うかの様に、この私自身の珍事を上回る、さらに訳の分からない珍事(?)に遭遇。
秘湯にもだんだん慣れてきて、
ベテランの気すら発し始めてる私でありますが、その日も例によって、普通の人は誰も居ない平日の朝、そもそも人里離れた山奥の秘湯。それも連休明けの月曜の朝、である。
こんな日のこんな時間にこんな場所で秘湯巡りをするのは私しか居まい、という、自負心にも近い
奢りの感情が、私の心にはとぐろを巻いて蠢(うごめ)いているのは、正直、否めない。
そういう、変な安心感から、そもそも私には油断が大きくあった。
まずは共同風呂を眺めに行くと、だ〜〜れも居ない。川のせせらぎの音が緩やかに聴こえる。
看板によると、ここは混浴らしく、お金も郵便受けに勝手に入れろ、などという、いい感じの雰囲気である。
ふむ。。。
…でも、かえってなんか落ち着かないにゃ、と思い、老舗旅館の内湯となっている、露天温泉に行くことに決定。
これまた鄙(ひな)びた、いい〜感じの旅館の小さな門をくぐり、玄関に行くと、し〜〜ん、として人の気配が無い。古い蓑笠などが飾ってある。
しばらく、ごめんくださ〜イ、と何度か呼ぶと、おかみさんが出てきて料金を払った。
「ここは、温度が低い温泉なので、ゆっくり入っていってください」
と、暗〜い玄関先で言われて、露天に進む。
途中、女湯脱衣所、とか書いてある建て屋があり、通り過ぎると、野趣たっぷりの露天温泉が。
すると、先客があり、角刈りのおじさんが入っている。
少し目が合ったのだけど、何か目を丸くしているおじさん。
別に気にもしないで、奥の簡易脱衣所へ。
「ふむ。ひとりだと思って楽しんでるところに、来るはずの無い変な客が入ってきた、って感じで、ちょっと悪かったのかな…」などと思ったけど、ま、いいや。
で、自分の服を脱ぎながら、ふと見ると、どう見ても
女物の下着と、サンダルが……。。
ン???
角刈りのおじさんは、岩に隠れた方に、移動してしまい、姿は無い。
とりあえず、露天に浸かってみると、本当にぬるい。外は寒い。でもいい感じ。。…しかし、問題は、おじさん、である。
女装趣味の変態おじさんだったら、ちょっとヤバい。
ただでさえ、ワタクシも先の珍事の様に、
変な勘違いをされがちな生物である。
いや、待てよ、、、あれは、もしかして、おばさん???
って、ことは、ここは女湯???? おれが、何か間違った?????? と、思い至って、なにか心臓がドキドキし始めた。
どうしよう?
周りをきょろきょろして、いや、ここはオトコ湯である。オレは間違ってないぞ。一体、何が起ってる????
野趣溢れる天然岩湯船に首まで浸かって、10分くらいは、ぐるぐる考えた。
その間、背後の岩陰の穴ぐらには、人の気配を感じるが、振り向こうにも振り向けず、ましてや、「こんにちわは〜ぁん」などと明るく声をかける空気感でも既に無い。
…………
さらさら
…………
さらさら
‥無言の行間があたりを支配している。
………。。。。
さて、私は10分以上は寒気の中を湯船に浸かったであろうか?
… 異常に長い10分間である。
無言の ‥‥‥ の連続技に業を煮やしたかのように、
角刈りおじさんは、とつぜん簡易脱衣所に
ざぶっぅ!!!と音を盛大に立てて、巨大なトドの様にあがっていき、その背後の姿が見えた。
ええっ??? 瞬間に見たのは後ろ姿だけだけど、矢鱈に大きな巨体にはバストの膨らみが‥、けっこう大きい……。
で、自分の服類などを持って、いそいそと、女湯脱衣所に走っていった。
???????????????????????? ………おばさんだった????
ってことは、ここはオトコ湯って訳ではなく、混浴で、こんな日には誰〜〜も居ないと思って入ってたら、オトコのオレが入ってきて、バツの悪い想いをして逃げていった、という件だったのか???
……… (悪いことしたかな‥)。
ま、いいや。今度こそ、誰もいない
超絶天然露天温泉を楽しもう。
そう思い直して、ゆっくり楽しむべし。
〜 〜 〜 〜 〜 〜
いい〜ゆ だなぁ〜 あははは〜ん
♥ ふと見ると、目の前に『この温泉は数百年の歴史があり、2時間くらいは入らずして、この温泉の真価などわからぬ』などと口上を記されている。
そうか。そこまで言うか。
良かろう。受けてたってやろう。どん、と来い。
さっきまでの
緊張がほどけたせいか、とたんに
気が大きくなって、普段は割とカラスの行水で早風呂なオレも、じっくりと攻めることに。
ふむ。ええ〜のう。長風呂も。外は寒いし、湯はぬるい。自然のアルファ波はそこらじゅうに充満しまくってるし。
ま、2時間はいかないにせよ、1時間半くらいは、楽しんだ。
相変わらず、だ〜〜〜〜〜〜れも、いない。 ふ〜〜〜。よし、出るか。オレといえども夕方から仕事もあるしね。
ビ〜ル飲みてぇ。
…などとつぶやきながら、簡易脱衣所は思いっきり外の寒気の中なので急いで服を着る。
う〜〜む、えぇぇ温泉ぢゃ。
で、さっきの女湯脱衣所の前を通り過ぎ、坂道の旅館の小道をすたすたとあがって行くと、後ろから気配がして、何かブツブツとぼやいてる声が聴こえる。
ふと振り向くと、さっきのおばさん、と同一人物と思しき人が旅館から出て来て、手に荷物の様なものを持って、後ろからあがって来るのが一瞬見えた。
えっ?????????? 姿は建築系の作業着。やっぱり角刈り。どう見ても、その姿はおじさん。声もおじさん。
しかし、この時間までさっきの暗〜い旅館の中に居たのかしら???
何してたんだろう?
…ここにきて、再び、完全に訳がわからなくなって混乱した。
おじさん、と思ったら → 女装の変態おじさん‥ → そうかと思ったら実は単なるおばさん‥ → そうかと信じてたら、やっぱり、おじさん!?? 意表をつきまくる展開に愕然として、坂を登り切ったところで、恐る恐る後ろを振り向くと、おじさん?は仕事用と思しき小汚いハイエースワゴンに荒々しく飛び乗ったかと思うと、びょ〜〜ん!と早々に去っていった。。。。
………なんだ、こりゃ?
…混乱しながらも気を落ち着け、帰路につくことにしたものの、帰りの道中、今しがたのこの件をどう理解すべきか本格的に訳がわからなくなり、推論が頭を迷走しながら駆け巡るオレ。。
推論A 普通バージョン
単なる地元のおばさんで、誰もいないだろうから、と思って入ったらオレに邪魔された。
推論B 少しディープバージョン
女装気のある地元のおじさんで、誰もいないと思って油断してオトコ湯に入ってたら、オレに邪魔された。
推論C かなりディープバージョン
男装気のあるおばさんで、誰もいないはずのオトコ湯にオトコのつもりでのんびり入ってたら、来るはずの無いオトコのオレ(しかもオンナと間違われる気のあるオトコ)が突然入ってきてビックリした。ジェンダーすり替わりの変テコリンな取り合わせが同じ湯船に‥。しかも閑寂として、他には誰〜も居ない。
異性物同士の緊張した空間が。
推論D もっとさらにディープバージョン
そもそも、玄関先で会ったおかみさんの雰囲気から、なにか普通ならぬ感じが既にあった。
誰も居るはずの無い、こんな日、こんな朝、こんな場所…、いわゆる、世を憚る暗い秘密のある、普通ではない、真実の愛の世界がそこに…。
… あ・わわわ。。。この図は見た目テキにはちょっと恐ろしい上に、しかも心の内面描写としては、ディープ過ぎて、なんだか異世界的に美しい。これだけで
芸術作品の主題に成りかねない。
真実の愛の追求、を独り行為し続けてるオレには、これは…。。。心に湯気の様に沁みわたる気も…。
数時間この脳内妄想の物語りから逃れるのがエラく難しいことに…。。
ふむ。
申ドシじゃの。