

ヨーロッパのエスプリ、それがどこから来たのかを啓示してもらいました。それは私の重要な仕事の核心となることでしょう。
音楽の異世界、それはまだ世界には現存し得ない、やがて必ず来る音楽の実世界、と、言った自分の永年積もり積もった信念を形にする事に強烈に集中している私なども、やはり本質的には、ただ、ギター弾きである、という『ギター弾き魂』を蘇らせてくれました。これから、どんなに凄いことをやっても帰ってくるのは、唯、弦を弾くということ、それこそが私の全てなのだと…。特に、それはブルース、あのアフリカの強烈な人間の原初の匂いを放つ、ギターという楽器だからこそ奏でる事が出来るルーツミュージックに…。
しかし、思えば、オルフェウスもサラスワティーも、その聖なる御手が触るのは弦です。それこそが自分の追い求める宇宙の原型だと、歓びを持って肝に命じさせられた。
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でもこれは、なんと象徴的な偶然だったのだろう?
自分の音楽観に座ってるジャズ、それはアメリカ音楽の態面を被った、実はフランスの素顔を持った音楽がその正体で、そしてブルース、それはアメリカ南部の移民の民のフォークロワ、その正体は、ヨーロッパの壮大な音楽建築に対するアンチテーゼをやってのけた、ロンドンのルード・ボーイの音楽観だ。
パリが無ければ、ジャズは永遠に芸術になってはいない。ロンドンが無ければ、ブルースは確実に忘れ去られる運命の唯の民謡に過ぎなかった。
ベストタイミングで、最良の形でそのエッセンスに触れた。
それはまるで、自分の魂の因果をすら感じる象徴的、暗喩的な出来事だった。
そうして、そういうもの全てを飲み込んで、全く別のもの、何か巨大なものを創る運命に私はある。
普通は歳をとれば、蓄積してきたある種の余芸で飯を喰ってゆくものだけど、自分はその逆をゆく道を採る。もうそういう芸なんてものは全部捨てても構わない。それだけの事は一応、本当に一生懸命にしてきたしね。
さて、と。モビーディックだ。
エイハブ船長は船員達と共に日本近海で死闘を繰り広げ海に消えていったけれど、こちらは世界最高のクジラ採りの名人の末裔なのだから、たった独りで充分だ。絶対にしとめてやる。そのクジラは日本の海に居るのだ。シーシェパードはオレを邪魔するなよ(笑)。

(↑この夏、毎日飲んでたヨーロッパ中のクラフトビールでフェイバリッド・ワン。ベルギーのピンクの象のラベルのビール、"delirium tremens"。ピンクの象から始まって最後には鳥の幻覚が見えるらしい