2018年07月16日
宮崎駿監督の印象に残った言葉 覚え書き
youtubeで宮崎駿監督のロング・インタビューを観た。非常に深い、色々な感慨、含蓄、思考を己に向けられる。自分に強い印象として響いた言葉を拾う。
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あの、アニメーション、いろんなアニメーションの作品が考えられますが、今、私が創ろうとしている作品は、こんな小さな毛虫の話です。この指で突くだけで死んでしまいます。
この小さな毛虫が、こんな小さな葉っぱにくっついている、生活を描くつもりです。
それは、アニメーションが生命の本質的な部分に迫った方が、アニメーションとしては、表現しやすいのではないかと思っているからです。
あの、わかりませんか?(笑)
それで、あの、こぅ100年や200年の短い歴史よりも、もっと永い何億年にもつながる歴史を、アニメーションは描いた方がいいと思っています。
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あの、フィルムが無くなって、私たちの使っていたセルも無くなって、絵の具で塗ることも無くなりました。
それから、バックグラウンドの背景を描くときの絵の具を、私たちはポスターカラーを使ってきましたが、ポスターカラーすら、生産はもう、終わるだろうと言われています。
筆も、いい筆が手に入りません。
それから紙が、この1、2年で急速に悪くなりました。
あの、私はイギリスのBBケントという、ケント紙を、あの、ペンで描くときは愛用していたんですが、ついに、普通に素晴らしい、僕にとっては宝物のような紙が、線をすっ〜と引くと、滲むようになりました。
インクが使えなくなりました。
何か世界は、もっと根元の方で、ミシミシと悪くなってゆく様です。
ですから、アニメーションの事だけ論じてても、しょうがないんじゃ無いかな、と思います。
いつでも、どうしてこれが流行るか、よくわからないものが流行ります。
もうそれも、それも、色々あっていいんじゃないかな、と、僕は勝手に思っています。
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エンピツで映画を創ろうという、ね。
エンピツが見えるようにやろう、という、画面を。
こう、精密にやってみたい、立体感を出したい、空間を出したい、とかね、それを突き詰めていって、その3DCGも使ってみた、色々やってみたんです。
それを精密にしていけばいくほど、何かこう、自分達の仕事がなんか、あの、神経質なものになってくる、ってのを感じて。
やっぱ、なんか失われていくんですよね。
で、とことんやったんです。
へっへっー(笑)。
で、これ以上これを続けることは無理だ、っていうか、やっても面白くない、っていうね。
で、増殖していくと(CGでコピーしていくと)、いっぱい描かなくても済むからいいだろう、っていう、これ、一つ草が風に揺れているやつを描いて、それをサイズを変えて、こここにも置くか、そこにも置くて、確かに全部揺れるんだけど、
幸せにならないんですよ、観てて。(笑)
やっぱりエンピツで描いたほうがいい、
エンピツで描くことがアニメーションの初源だ、って。
随分、僕らはそれで(作画の)枚数を減らすってのはね、もう、至上命題にしてもう、
僕、この仕事45年やってますけど、最初からあったんですよ。
つまり、繰り返しを使え、とか、動かすな、とか、止めた口ばかり描けばいい、とか。こういう格好(直立不動)してずっと喋ってるだけ、とかね、こう。目ん中だけ、火が燃えてるとかね。
自分達のアニメーションをやりたい、と思ったときの初源っていうのは、こう、全部描いて、動かしてみたい、って、とことんなんでも動かす、枚数なんか気にしない。
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勢いのあるいい新人たちが入ってくるかというと、入ってこないんですよ。
ヴァーチャルなものを見て育ってますから。
絵を描いて動かしていくっていうのは、自分が体を使って経験したことが出てくるんです。
ヴァーチャルなものをいくら見ても、そりゃ勉強にならないんです。
で、火を描くって時にアニメーションの火なんか見たって描けないです。
ここで火を燃してるときに、生まれて初めて裸火を見たっていうやつがいるんですからね、スタッフで。
その、アニメーションをやってくうえでは、その、自分の体が経験してきたもの、見てきたもの、匂いを嗅いできたもの、手触りも含めて、感触も全部含めて全部。耳と目だけじゃないんですよ。
感触とか匂いとかが結構大事なんですよ。
その絵を描いている時に、何かの匂いを思い出してたり、その時に自分が経験してきたものが、突然戻ってきて、この道は、あの、あそこにあったどっかにあった木戸のとこの裏道だ、と思いながら描くんですよ。
結局、自分の体験、具体的な体験が、その人間にとっての支えになってくんですよね。
もう生活から教えることを始めないといけないのかも知れない、って。生活から教えるってのはもう、食いもんの食い方からね、何を食うかまで、放っておきゃ、カップラーメン3食みたいなやつも出てきますから。
それは実は絵、描けないってことになる、っていうね。
何を始めるんですかね、我々は。よくわからないけど、そんなことまでやらなきゃいけないのかね、とかね。
夜遅くやるな、朝からやれ、とかね。
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ジブリがここまで生き延びてこれたのは、全体と逆な方向を選んできたからです。
だから自分たちがマーケットを独占したいとか、そういう気持ちは全然無いです。
どっちかの方向に怒濤のごとく、いってくれたら楽なんですよ。僕ら、その反対をやってきゃいいんだから。
どっかでそういう気持ちをもってないと、その、この今の消費の、過剰な消費のね、気まぐれにね、つきあってくことはできないですよね。
そんなのつきあいたくないですよ。
もっと、ちゃんと仕事をやりたい、それで、ちゃんと受け止めてくれるお客さんたちに出会いたいと思って創ってますから。