2023年12月21日
natura : 第67回ORPHEUS読書会
5年ぶりの読書会となりました。
コロナでできなかった事と、海外文学について主題を移す前に日本の近代詩を扱おうとしたら進まなかった事が主要因ですが、例によって、ぼ〜んやりしてたら天の啓示の様に、突然こういう形に成りました。
その間、物忌みして源氏物語を仮名原文まで遡って読み耽ったり、個人的読書はなんだかんだと充実していた訳ですが、そういう状態のブレークスルーとなる読書会となりました。
詩学と海外文学の架け橋の様な読書会。
この作品は昨年、上梓発売後に頂き、今年の正月に読み耽っていたのですが、もっと早くこの読書会にこぎつける予定が、先生がお怪我をされ、さらに作者のぺロルさんもフランスのご自宅で病状が一時よろしくない状態となって、自然と頓挫していました。
しかし、高齢の仏詩人 ペロルさんも無事回復されて、今冬には来日もされて、先生も無事にリハビリが順調に進んでお話をお伺いできる様子となった為、急遽この会の運びとなりました。
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詳しい内容は動画を閲覧頂くとして、今までは若い人を中心に読書感想的な会でしたが、今回は執筆された当事者の先生に直接インタビューする特別な内容となっています。
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長年に渡り九大、西南学院大、山大ほか多くの大学で教鞭をとられた先生のお話は、含蓄に溢れ、なぜかフランス、ギリシアでのヌーディストビーチの話から導入されて、聞いていて思わず笑ってしまったのですが、動画全体を観て頂けたら解る通り、"西洋の根源"というべき大きな文明論に直結するトピックとなっています。
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動画を編集していて、はっと気づいたことですが、三島がフランス経由で、ギリシアへ旅し、太陽の下に輝くその直截な美にうたれて帰国直後に『禁色』を書き上げます。当時の三島らしい同性愛小説ですが、先生が彼の地で経験した逸話と、このトピック、エピソードは直結しています。
旧約聖書の世界がその原型にあり、しかもキリスト教的な倫理感は、なんらそれに寄与しない、という話題は西洋という文明感の全てを顕しています。
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動画後半の、詩学の作法、歴史、に関わる教養から来る深い見識は、翻訳作業に於ける実務的難儀も暗に明示されていますが、仏文学ファンとして、まさにここは拝聴してみたかったことで、なんとなく普段から思っていたことをズバリ、明答くださっておられます。
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しかし、驚いたのは、先生は数ヶ月前に二ヶ月間も意識不明で、記憶に関わる部分の損傷が激しかった状態から回復、リハビリされて、話すのもややキツい状態だったにも関わらず、言語分野、文学分野の記憶は、明晰、正確で、先生の長年の鍛錬の積み重ねの成せる技であろうか、と非常に感銘を受けました。
これを見て、人間が真に体得したものは、そうそう簡単に消えたりはしない、という、なにか安心感の様なものを感じました。
さらなる回復を待ち、ぺロルさんの小説第二部の翻訳はやはりぜひ先生に手掛けて頂きたい、と心から願うばかりです。
おそらく、ここで紹介した作品を更に上回る、最高傑作ではないかと思われます。
今の日本、この混迷の日本、その混迷のメカニズム、詳細を解き明かす”重要なこと”がそこに記されている筈です。
それを祈願し、静かにそれを待ちましょう。