2024年03月20日

0.23333333 - L'histoire invisible - : ⚫︎ LIU ◯ works 3rd













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This music becomes complete by layering live improvisational poetry and improvisational performance.


⭐︎★




posted by サロドラ at 07:07| 音楽 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年03月01日

THE NEW LOOK 〜 Chanel - Dior 〜



 最近は、サブスクとは言ってもすでに既存の映画会社、TV制作などを遥かに上まって凄い作品が出ていて、驚くばかりです。


 よく考えたら資本力の桁が違い、スタッフは世界最優秀チームを従え、さらに視聴者が完全にTVでも映画でもなく、そちらへと移行しているのだからこれも自然な流れなのでしょう。


 そんな中、私はApple制作の特にドキュメンタリー作品をよく観るのですが、そのクオリティー、視点、などは別格で、いつも感嘆します。


 で、これは最近、歴史の史実を元に制作された、半ばドキュメンタリー、半ばドラマ、という位置の映像作品。


 『THE NEW LOOK』


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 戦中フランスから戦後にかけて、パリを舞台にシャネルとディオールという二人のファッションリーダーを対比的に描くドラマ。


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 去年の暮、読書会で取り上げた戦中フランスの深層。 

 個人的に興味を惹かれたのは、ナチスドイツを巡る、親ナチス側と、地下抵抗活動をする私達がよく知る『自由フランス』を標榜する側、そのあたりのフランス人の心の交錯でした。






 私はフランス文学を愛読する時、完全にレジスタンス活動に身を挺し自由を標榜する芸術家に、常に強いシンパシーを持ちながら読んでいるのですが、「その逆側に何があったのか?」という視点、知識は浅薄に置き去りで、よく知らない世界でした。


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 なぜ、21世紀の今、そこに興味を惹かれるのかというと、コロナ禍が終わる現在は、まるで100年前の世界のパンデミック後とそっくりで、それを読み解くことはまるで、これから世界で起きる未来の予言書を読むかの様な、なんともスリルを感じさせるのです。


 20世紀、パンデミック後に世界恐慌、震災を含む天災、ファシズムの台頭、戦争と続く、暗い物語がありましたが、今の世界は、どこかそれを大きな畝りで反復している。



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 フランスを例に引くと、現マクロン政権の動向にはどこか、ペタン将軍(戦中にナチス占領を進め戦後流刑)の礼賛、中国への擦り寄り、など『自由フランス』とは言えない気配があり、したたかに世界を伺い、必ずしもアメリカを中心とする自由主義の覇権に追従しない姿勢を見せています。


 これは70年代後半生まれの若いマクロン氏の思想、と言うよりも、フランス人のある一定数の潜在的感性の反映と見るべきで、今のフランスに何があるのか、を読むことは、無思想なアメリカ追従でもなく、台頭する独裁政権でもない、とある着地点を模索している、と私には見えます。


 そのカオスが、主には移民政策の失政で、パリはまるでパリでなくなり、ロンドンも、ベルリンも、本来のその文化は崩壊寸前という惨状を導いています。


 20世紀の独裁政権の誕生も、同じカオスを母体に誕生しました。



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 こうした危機感を世界中の人がおそらく同じく感じていて、そこでこのApple社制作のドラマも、今のこうした現状に寄り添った内容というわけです。




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 こんな日本の田舎町でも、近所のデパートに入ったその先に、まず目に入るのはCHANELDIOR。対比的に左右に並び、その真ん中に日本やアメリカのメーカーが並んでいます。



 それはどこか象徴的、暗喩的に目に映ります。


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 私の至極浅薄なイメージで、CHANELの王道なパリの匂い、戦前パリのストリートから女手一つで成り上がったCHANEL、CHANEL N°5の匂い、それは香りではなく、自由フランスに輝く『自由の女神の思想』の匂い、に思っていました。



 対してDIORは、どこか中心が見えず、漂泊したファッションブランドのイメージがあり、その意味で強さを感じなかったのです。


 
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 昨年から気になっていたトピックと絡んで、Apple制作のこのドラマは、その深層を描いていてどうにも面白い。


 AppleTV+でしか観れないドラマですが、Appleという世界No1企業も、あれは実は思想や哲学を売っている会社で、国家を超越した自由、そこに中心があり、今後の世界を創造する使命、責任を、ただ人気とりなだけの政治屋や、メディアに対抗して担っているかの様です。



 戦前、戦中のCHANELとDIORの対峙、ナチスという独裁政権を介して展開する物語は、まるでAppleという企業の模索自体であるかの様です。


 任意ではないにせよ、ナチスのスパイに成り損ねたCHANEL、レジスタンス活動をする妹をナチスに強制収容され同性愛者だったDIOR。

 この展開は、そのまま今のApple社の立ち位置の模索そのもの、で、ジョブス亡き後、Appleを世界No.1企業に押し上げた現CEOもやはり同性愛者で、かつ、自由と自立を標榜する思想を製品にして世界を席巻している。


 
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 そうした、ある意味、現代の予言を提起するかの様な、またそれを制作する企業としての哲学、在り方を模索するかの様な、そんな映像作品です。


 
 これは普通のフィクションでもなく、またドキュメンタリーでもなく、その両方を混ぜているのは、そんな理由からなのでしょう。


 
 常に最初にこの文言が謳われます。


 "INSPIRED BY TRUE EVENTS"
 

 歴史の史実を映像で再現し、戦後解放されたパリで、Édith Piafが歌い、それを感涙して聴くDior、、親ナチスへの嫌疑から、街で坊主頭にされてリンチに遭うナチスと交流した女性達同様、吊し上げに成りそうなChanel。


 その交錯は、今の自由主義圏と独裁政権圏の対峙、裏側の交錯を、暗喩的に映し出し描いています。

 
 いつも毎週水曜日に新作が発表になるのですが、いつも水曜日を楽しみにしている私です。


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posted by サロドラ at 01:02| 映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする