2017年01月11日

お稽古初め


 例年通り、新年書き初めの後のお稽古初めはペン字から始めました。


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 昨年は墨液を中止して、摺った墨のみで毛筆のお稽古を終始してみたのですが、ふと思ったのは、ペン字のインクの色合いも、どう見ても気に入らぬ…。。



 それで、普通は絶対しない事でしょうが、墨でペン字を書く実験を重ねてみました。


 やはり色合い、黒の色彩トーンはやはり思った以上にとっても良い。しかし、問題はペンは何を使用するか? 普通はつけペンの金属のペンです。しかし抑揚の深みが無く、面白くない。

 それで、鳥の羽ペンを使用。


 本物の墨は、インク特有の平坦さが無く、掠れ、滲み、色合いの変化が、極細の線にも現れて、線の息づかい、呼吸感が感じられる。

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 それがより強く表現される。しかし実用としては滅茶苦茶に書きづらく、ペンには筆の吸収場所が無いので墨も息切れが早く、全く続かない。





 しかし、思えば、中世のヨーロッパではこの状態で文章を書いていた訳で、近世頃までは音楽家が書くスコア譜面もこうしたペンを使用していた筈です。墨ではなく黒い顔料のインクでしょうが‥。


 酉年に掛けて、鳥の羽で書くのも一興でしょう。顔料のインクではなく、本物の墨。


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 この取り合わせは、古代から近代まで何処にもありません。


 しかし、毛筆を使うと、改めてその実用的な合理性が身に沁みますね…(笑)。書きやすい。線が全く息切れしない。表現に多様性の幅が出る。

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 バガボンドを描く漫画家の井上雄彦氏は、本来はGペンで描く漫画を、墨と面相筆という極細の筆で描いているそうです。

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 宮本武蔵本人がそうであった様に、本当に繊細なコントロールを指先にさせる事が出来る技巧、指のコントロールを出来ているなら、日本の柔らかい毛筆ほど、自由度の高い表現が出来るものはありません。


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 藤田嗣治の若い頃の、猫や裸婦の極細の線は、やはり面相筆で描かれています。ピカソも、彼の描く繊細な線に唸ったという逸話を耳にした事があります。戦後のリアリズムを直視しない転倒した左翼思想が日本から海の外に追いやってしまった、芸術分野では最高の才能です。

 彼の痛烈な日本への最後の言葉は
「日本画壇は早く国際水準に到達して下さい」


 …こりゃ、そのまんま大声で言いたい。

 日本音楽は早く国際水準に…


 …いや、やめときましょ。

 
 私個人の望みは国際水準、じゃなくて、歴史水準。

 
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posted by サロドラ at 07:07| 書道 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする